
飯坂温泉
Iizaka Onsen奥州三名湯のひとつ。摺上川沿いに九つの共同湯が並ぶ福島の歴史ある温泉町。
芭蕉が一夜を過ごした湯
飯坂温泉は福島市の北郊、摺上川のほとりに開けた小さな湯の町です。福島駅から 福島交通飯坂線でほどなく着きます。地元の伝えでは、その源は遠く 日本武尊の時代に遡り、東征の途上に病を得た尊が「佐波子湯」に浸かって たちまち癒えたと語り継がれてきました。文の道に名を残すのは少し後、 元禄二年(一六八九年)の夏、松尾芭蕉が『おくのほそ道』の旅の途上に この地を踏んだときのことです。とはいえ芭蕉の筆は冷ややかで、雨に降られ、 蚤と蚊に悩まされ、粗末な宿に一夜を過ごして早朝に発ったとだけ記しています。 それでも飯坂は、鳴子・秋保と並ぶ奥州三名湯の一として数えられ、 その共同浴場の伝統は、しばしば道後や有馬になぞらえて語られてきました。
その中心が、町の真ん中に静かに建つ**鯖湖湯(さばこゆ)**です。現在の堂は **平成五年(一九九三年)**の改築によるもので、明治二十二年(一八八九年)に 建てられた「明治期木造共同浴場の祖型」とも称された旧館を、忠実に写して 立て直したものです。黒く焼いた板壁に瓦の小屋根、すっきりとした檜の縁台。 入浴料は今もおよそ二〇〇円ほどで、町の人々が一日の終わりに通ってきます。
九つの共同浴場と摺上川
町は徒歩で回れるほど小さく、摺上川の両岸に旅館が肩を並べています。橋は短く 水面に近く、いまも九つの共同浴場が曜日ごとに営業を続けています。 鯖湖湯、波来湯、導専の湯、仙気の湯、大門の湯——その名は 古い町内会の道しるべのようでもあります。湯は土地の流儀でしっかりと熱く、 作法は静かで、湯室には飾り気がありません。手拭と小銭を握って、午後のうちに いくつかの湯を巡り歩くのも、この町ならではの過ごし方です。
飯坂餃子と花ももの里
台所の名物は飯坂餃子です。一皿に円く並べて焼き上げ、皆で取り分けて 食べる円盤型で、駅前の小店の卓を賑わせます。早春には地元の桜 暁桜(あかつきざくら)が川岸を淡く染め、四月に入ると朝霧橋を渡って 花ももの里へ。数十品種、数百本の花桃が二週ほどのあいだに一斉に咲き揃い、 町の春をひととき華やかにします。
この温泉地の施設
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50km圏内参考・出典
- 飯坂温泉オフィシャルサイトofficial— 旅館組合と観光協会の統括サイト。九つの共同浴場の一覧と季節の催事を確認できます。
- 飯坂温泉オフィシャルサイト、歴史official— 日本武尊伝承、江戸期の規模、鯖湖湯を「明治期木造共同浴場の祖型」とする地元の語り口の出典。
- 飯坂温泉 共同浴場案内official— 共同浴場の運営会社による浴場一覧、営業日、大人二〇〇円という基本料金の出典。
- ウィキペディア、飯坂温泉— 福島交通飯坂線でのアクセス、摺上川沿いの町並み、鯖湖湯の平成五年改築の典拠。
- Wikipedia, Iizaka Onsen— 元禄二年(一六八九年)の松尾芭蕉来訪と『おくのほそ道』との関わりを補強する英語版資料。