宝川の流れに沿って大きな露天風呂が四つ並ぶロケーションは、冬になると雪景色に包まれ、格別の雰囲気です。混浴ですが湯あみ着が貸し出されるので、誰でも気軽に入れます。女性専用の露天風呂や内湯もあります。1923年創業の老舗で、木造の建物と川音と湯けむりが合わさった風景は、ここだけのものです。

男女がひとつの湯を分かち合う、日本で最も古くおおらかな入浴のかたち。守り、味わいたい生きた伝統です。
カタログには348件の混浴温泉
混浴とは、男女が別々ではなく同じ湯に一緒に入る、男女共同の入浴のことです。日本で最も古い入浴のかたちで、隠しごとのない裸の付き合いという考え方に根ざしています。
いかがわしいものではありません。村の共同生活や湯治(長く湯に浸かる療養)の伝統から生まれたもので、おおらかな気持ちで臨めば、混浴は穏やかで自然で、静かに人と人がつながる場です。
混浴は、わざわざ訪ねる価値のある湯であることが少なくありません。隠すものがないからこそ、仕切りのない広々とした湯、川辺の大露天や大きな屋外風呂が多いのです。古く、その土地ならではで、歴史に富んだものも多く、代々同じ源泉を守り続け、流行に合わせるより歴史を守ることを役目と考える宿が支えています。
そして、それは静かに姿を消しつつあります。公衆浴場法のもとで新たな混浴は基本的に許可されず、残った湯は二度と取り戻せません。歴史ある混浴が男女別に分けられるとき、得がたいものが永遠に失われます。私たちは、それは進むべき方向ではないと考えます。踏みとどまっている湯は、訪れ、支え、敬意をもって接することで生き続けます。
いちばんの心得はシンプルです。受け入れる気持ちで行くこと。混浴は、誰もがゆったりと、人の体を気にせずにいてこそ成り立ちます。見られること、人と湯を分かち合うことがどうしても無理なら、自分のためにも湯のためにも、無理をしないほうがよいでしょう。けれど、その気負いを手放せたなら、得るものは確かです。自意識が消え、見知らぬ人との間のいつもの壁もほどけていきます。
混浴は、男女を問わず誰にでも開かれています。多くの湯が湯あみ着や女性専用時間を用意して、最初の一歩を助けてくれます(下記参照)。白濁したお湯ならいっそう入りやすいでしょう。静かに、おおらかに行けば、温泉文化のいちばんあたたかく人間味のある一隅に出会えます。
カタログに基づく、日本全国の混浴温泉。全画面の地図で絞り込んで探せます。
コレクションに全348件
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混浴の湯は移ろいやすく、閉まったり、混浴をやめたり、女性専用時間に切り替わったりします。お出かけ前に必ず施設の公式情報をご確認ください。情報が古いと気づいたら、地図を更新できるようお知らせいただけると助かります。
混浴は、秘湯の宿が伝統を守ってきた東北や山間部に多く集まっています。
今どきの混浴では、湯の中で着られる軽い湯あみ着を用意・貸し出ししているところが多くあります。特に女性や初めての方にとって、いちばん心強い味方です。普通のタオルは衛生のため、湯には浸けないのが基本です。
多くの混浴では、女性だけが入れる女性専用時間を毎日設けています。湯を分かち合うのに抵抗があれば、この時間に合わせて訪れるとよいでしょう。
入る前に掛け湯で体を流し、静かに湯へ入って縁で長居せず、人ではなく景色に目を向けましょう。じろじろ見ないこと。とはいえ、わざとらしく目をそらす必要もありません。自然体で。掲示がない限り水着は基本的に不可で、タトゥーは通常の温泉と同じ扱いです。
全国に散らばる混浴を、初心者向けの宿から野趣あふれる露天までいくつか。
宝川の流れに沿って大きな露天風呂が四つ並ぶロケーションは、冬になると雪景色に包まれ、格別の雰囲気です。混浴ですが湯あみ着が貸し出されるので、誰でも気軽に入れます。女性専用の露天風呂や内湯もあります。1923年創業の老舗で、木造の建物と川音と湯けむりが合わさった風景は、ここだけのものです。
乳頭温泉郷で最も古い宿で、茅葺き屋根の建物が深い森の奥に佇んでいます。代名詞である混浴の露天風呂は、乳白色の硫黄泉。湯の華が舞う不透明な湯は、混浴でも自然と入りやすい雰囲気です。女性は専用の脱衣場から直接湯船に入れる設計で、安心して利用できます。内湯を含む全四浴槽。冬の雪景色の中、白濁した湯に浸かる体験は格別です。
「千人風呂」の名を持つ酸ヶ湯の大浴場は、天然の抗菌性と独特の香りを持つ青森ヒバをふんだんに使った巨大な建築です。約300年の歴史を誇る木造の湯殿に一歩入ると、硫黄の香りと蒸気、そして歴史の重みに包まれます。混浴ですが、湯あみ着の貸し出しがあるので安心です。また、女性専用時間は毎日2回(8〜9時、20〜21時)設けられています。強酸性のお湯は金属類を傷めるので、アクセサリーははずして入りましょう。
金谷旅館の千人風呂は、日本最大の総ヒノキ造りの浴場として知られています。大正4年(1915年)建造の巨大な木造浴殿は全長約20メートルにおよび、ヒノキの香りに包まれながら湯に浸かれます。混浴ですが、女性専用時間と女性が利用できる連結した女湯も設けられています。旅館は1867年創業と歴史も深く、伊豆・金谷山のふもとの静かな谷に位置しています。大浴殿のほかに小さな露天風呂もあり、星空を眺めながらの入浴も楽しめます。
北温泉旅館は江戸時代から続く湯治宿で、武骨な木造建築と天狗のお面が今も来る者を迎えてくれます。温泉の歴史は1,200年以上とも言われ、川沿いの露天風呂や滑り台つきの大露天風呂など、個性豊かな五つの浴槽が揃っています。混浴の露天風呂と女性専用の内湯もあり、それぞれに雰囲気が異なります。映画「テルマエ・ロマエ」のロケ地としても知られています。
青荷温泉は徹底した「不便の贅沢」を守る宿。客室には電灯もテレビもなく、夜になるとスタッフがランプを届けてくれます。圏外で電波は届かず、Wi-Fiもありません。浴場は敷地内に四か所あり、木造の内湯、滝を眺める「滝見の湯」、そして渓流沿いの混浴露天風呂など、それぞれに風情があります。泉質は穏やかな透明のお湯です。冬季は専用のシャトルバスでしか辿り着けず、それ自体が「秘湯」らしい体験の始まりになっています。
蔵王温泉のお湯はpH1.3〜1.6という強酸性の硫黄泉で、空気に触れると乳白色に変わります。善七乃湯は100%かけ流し源泉を使用。大浴場は混浴を基本としており、女性専用時間(15〜18時)以外は水着着用が必要です。貸切風呂もあります。蔵王温泉は東北屈指の温泉地で、その歴史は西暦110年頃の湯の発見の伝説にまで遡ります。
杖立温泉の元湯は、紅葉橋のたもとに位置する小さな岩風呂です。杖立川の流れを間近に感じながら、塩化物泉の透明なお湯にゆっくりと浸かれます。大きな岩が自然の目隠しになっており、混浴ながら入浴しやすい造りです。地元の伝説では、神功皇后がここで出産したと伝わる歴史ある湯でもあります。湯けむりが漂う風情ある温泉街は、こいのぼり祭りでも知られています。
和歌山県・川湯温泉では、毎年12月から2月にかけて大塔川の河原を掘り起こして作る巨大な混浴露天風呂「仙人風呂」が出現します。73度の源泉が川底からお湯として湧き出し、川の冷たい水と混ざってちょうど良い温度になります。規模は年によって異なり、自分で砂を掘りながら自分だけの場所を作る楽しさもあります。開放的な河原の湯のため、水着やタオルの着用が必要。冬空の下で川の流れに身を委ねる体験は、「仙人」の名にふさわしい非日常感があります。
北海道・上富良野の十勝岳近くにある吹上露天の湯は、無料・無人の野湯です。駐車場から少し歩いた森の中に、源泉かけ流しの湯船が二つ。下段は44度前後で快適に入れますが、上段は50度近くあり入れるのは覚悟のある方だけ。無色透明の塩化物泉で加温・加水なし。脱衣所はなく、森の自然の中に溶け込むような入浴体験です。テレビドラマ「北の国から」で有名になった場所でもあります。
日本では長いあいだ、混浴はごく当たり前の入浴のかたちでした。江戸の町では湯屋が社交の場で、一緒に湯に入ることに恥じらいはありませんでした。1850年代にペリー艦隊が来航すると、西洋の人々はこれに驚き、遠征の公式報告書『日本遠征記』(フランシス・ホークス編、1856年)は混浴を「住民の道徳について、アメリカ人に好ましい印象を与えるものではない」と書きました。その挿絵は、後の版から外されました。
「文明国」と見られたい明治政府は、1869年(明治2年)2月に町での混浴を禁じ、1879年には東京が浴場取締の規則のもとでこれを徹底しはじめました。ただし禁じられたのは新しい混浴で、すでにあったものは続けることが許されました。この決まりは今も生きており、だからこそ混浴は新たに生まれることがなく、受け継がれるだけで、東北や山あいの秘湯に多く残っているのです。
混浴の数を数えた公式の統計はありません。よく引かれる「1990年代の約1,200から今は数百へ」という数字も、ある温泉記録者によるもので、調査ではありません。それでも減少は確かで、見過ごされてはいません。2021年には環境省が「10年後の混浴プロジェクト」を行い、いわゆるワニの問題を取り上げ、湯あみ着の試みを進めました。残っている湯が残っているのは、宿の人も、入る人も、守る価値があると今も信じているからです。
混浴を失わせる最短の道は、心ない振る舞いです。女性を見ようと湯に長く居座る男性は、水面すれすれに潜む様子からワニと呼ばれ、女性を遠ざけ、宿に男女別へ分けさせてしまいます。混浴は、そこにいる人の敬意で生きもし、滅びもします。湯を守るような客でありましょう。
日本では、子どもが異性の浴場に入れる年齢に制限があり、近年はその上限が引き下げられています。東京都では2022年1月から上限が6歳となり、7歳以上は自分の性別の浴場を使います。基準は都道府県ごとに異なるので、現地で確認しましょう。