黒川温泉
く ろ か わ お ん せ ん

黒川温泉

Kurokawa Onsen
熊本県九州・沖縄地方40施設

阿蘇の山あいの一軒宿の集合体。入湯手形で参加旅館の露天三湯をめぐる。

ひとつの宿としての村

黒川温泉の歴史は江戸中期にさかのぼり、日田と竹田を行き来する大名たちの休息地として知られていました。しかし昭和の後半までは無名に近い湯治場にすぎず、廃村の危機さえ語られていました。再生の起点となったのは、新明館の若き主人・後藤哲也氏です。二十四歳の彼は約三年半をかけ、川沿いの岩肌をノミ一本で掘り抜き、三十メートルに及ぶ洞窟風呂を完成させました。そこで定められた「自然の風景に湯を委ねる」という思想は、やがて谷全体の共通理念となります。一九八六年には旅館組合が小国杉の円い木札「入湯手形」を発行し、客は三軒の露天を自由に巡れるようになりました。一九九四年には青年部が「黒川温泉一旅館」というビジョンを定め、「町全体がひとつの宿、通りは廊下、旅館は客室」という考え方を制度化しました。

杉と石、そしてネオンのない谷

田の原川が刻む狭い谷あいに、三十軒ほどの宿が低く並んでいます。建物は色を抑えた木造で、屋根は杉皮や瓦に統一されています。再生の初期には約二百本の看板を申し合わせて撤去し、空いた地面には広葉樹や杉が植え直されました。今では村は通りというより、森のなかに開かれた小さな空地のように見えます。露天風呂はおおむね川の高さに置かれ、洞窟のなかにあるもの、木の軒下にあるものなど形はさまざまですが、湯に浸かれば必ず水音が聞こえます。夕暮れには浴衣に下駄の客が石灯籠の灯りを頼りに宿を渡り歩きます。背後には阿蘇カルデラの北縁が立ち上がり、東には九重連山が控え、湯気と霧と杉の匂いがほぼ同じ濃さで漂っています。

季節について

冬がもっとも写真に撮られる季節です。十二月中旬から四月初旬にかけて開催される「湯あかり」では、無数の竹灯籠が川沿いに灯ります。標高があるため、杉葺きの屋根に雪が積もる夜も珍しくありません。初夏には田の原川沿いに蛍が舞い、紅葉はカルデラの外輪山を十月下旬から十一月にかけて染め上げます。

地区

黒川温泉内の2地区
小田温泉
Ota Onsen
7施設
白川温泉
Shirakawa Onsen
1施設

この温泉地のプログラム

1件

この温泉地の施設

40施設 · 評価順

地図で見る

近隣の温泉地

50km圏内

参考・出典

  1. 黒川温泉観光旅館協同組合 公式サイトofficial旅館数、入湯手形、季節行事の出典です。
  2. 黒川温泉 — Wikipedia戦後の再興、後藤哲也氏による洞窟風呂、1986年の入湯手形発行までを記載。
  3. 新明館 — 黒川温泉 歴史物語村の再生を主導した旅館自身による回想です。
  4. ミツカン水の文化センター 機関誌『水の文化』72号黒川温泉の景観統一と協働運営についての論考。
  5. 学芸出版社「まち座」— 入湯手形リニューアル入湯手形が地域通貨として再設計された経緯を解説。