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ぬる湯 — やさしい湯

一時間でも浸かっていられる温度。湯はゆっくり働き、急ぐ理由はどこにもありません。

カタログ収録のぬる湯 291 件

ぬる湯とは

ぬる湯は、だいたい32〜40℃くらいの、体温よりやや低いかわずかに高い程度のお湯を指します。法律上の区分ではなく、温泉法のどこにも出てきません。「ぬるい」から来た入浴文化の言葉で、源泉ではなく浴槽の温度をあらわします。

そして35〜36℃あたりが、いわゆる不感温度です。熱くも冷たくも感じられず、体がつくる熱と逃がす熱がほぼ釣り合う帯で、脈拍も血圧も呼吸もほとんど動きません。ぬる湯での一時間が、熱い湯の十分のように過ぎていくのはそのためです。

「熱い」とは何度からか

温泉法にもとづく鉱泉分析法指針は、源泉を四つの区分に分けています。ここで測られているのが泉温、つまり湧出時の温度であって、浴槽のお湯の温度ではないことに注意してください。

ぬる湯(浴槽の温度)32〜40℃
25°
34°
42°
  • 冷鉱泉25℃未満
  • 低温泉25〜34℃
  • 温泉34〜42℃
  • 高温泉42℃以上
色の区分は源泉の温度、その上の括りは浴槽のお湯の温度です。

ぬるい湯のほうが効くことが多い理由

圧倒的に長く入っていられる。

環境省は通常の入浴について、慣れたら15〜20分を2〜3回としています。源泉が35.4℃と28.5℃の新潟・栃尾又温泉では、伝統的な入りかたは1〜2時間。湯に溶けているものが、その間ずっと働き続けます。

体が湯と戦わずにすむ。

42℃に10分浸かると、血圧は20〜40、脈拍は40拍ほど上がり、体温は2℃上昇します。環境省は、高齢の方、高血圧・心臓病・脳卒中の経験がある方に、42℃以上の高温浴を避けるよう明記しています。その手前では副交感神経が優位になり、血管はひらき、脈は上がりません。

湯が持ってきたものが失われない。

同じ資料は温泉を「なまもの」と呼び、失われるものを挙げています。硫化水素、鉄、二酸化炭素、ラドン。とくに二酸化炭素は温度が上がるほど溶けにくくなるため、ぬるい炭酸泉を加温することは、その湯を療養泉たらしめている当のものを飛ばしてしまうことになります。

全国のぬる湯

タグ付けしたぬる湯を一枚の地図に。

291 件

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施設の掲示や入浴した人の報告をもとに、浴槽の温度としてタグ付けしています。網羅的なリストではなく、育てていくリストです。抜けているぬる湯をご存じでしたらぜひお知らせください。

ぬる湯の入りかた

ぬる湯が求めるものは、熱い湯とはほぼ逆です。難しいことは何もありませんが、作法が違います。

  • 判断するのは20分入ってから。 最初の数分は物足りなく、むしろ寒いくらいに感じます。それはやがて消え、そのうち何も感じなくなります。5分で上がってしまうと、入ったことにならないのです。
  • 入浴の前後に水分を。 長湯は思っている以上に水分を奪います。しんどさをまったく感じないぶん、そこが落とし穴です。
  • 湯あたりに気をつける。 入浴を繰り返して3日〜1週間ほどで、気分不快、不眠、消化器症状、皮膚炎などが出ることがあります。運が悪いのではなく、知られた反応です。回数を減らすか一日休んで、回復を待ちましょう。
  • 上がったあとに洗い流さない。 タオルで拭きとって、成分は肌に残しておきます。ただし酸性泉や硫黄泉で肌の弱い方は、真水やぬるま湯で流したほうが安全です。

まずはこのあたりから

ぬる湯という言葉のもとになったような湯と、行きやすい湯をあわせて。長く浸かれることそのもので知られている宿もあります。

支笏湖のほとりにぽつんと佇む一軒宿で、目玉は「天然野湯」です。浴槽と湖を隔てるのは岩場だけで、全国でも数少ない足元湧出の湯として知られ、湖の水位に合わせてお湯の深さも変わります。ほかにも支笏湖と山々を一望できる展望露天風呂、男女別の大浴場(内湯・露天風呂・サウナ・水風呂・外気浴スペース付き)、そしてバレルサウナ付きの「丸の湯」と露天風呂付きの「駒の湯」という二つの貸切風呂があります。お湯はうっすら塩気を感じる無色透明の湯で、上がった後も体がじんわり温まると評判です。 創業は大正4年(1915年)、初代・佐々木初太郎が見つけた源泉を今も守り続けており、「日本秘湯を守る会」の会員宿でもあります。館には電気・水道といった公共インフラが通っておらず、自家発電と支笏湖の水でまかないながら、湖畔に自然に湧く温泉をそのまま使い続けています。

名物は「墨の湯」と呼ばれる真っ黒な湯で、鉄分を豊富に含む硫黄泉が酸化して黒く染まります。天気や季節によって乳白色・灰色・エメラルドグリーンへと色が変わる「五色の湯」として知られており、雨の日には全湯が一斉に黒くなることも。塩原でも最奥部にあたる元湯エリアの源泉自噴の湯で、自然な鄙びた雰囲気が漂います。

四万温泉にある、こぢんまりとしたレトロな雰囲気の旅館です。館内のお風呂はすべて温泉で、貸切露天風呂が3つあり、宿泊者は予約なしで何度でも無料に利用できます。男女別の大浴場も別に用意されています。客室のうち2タイプには専用の露天風呂が付き、1タイプには渓流とやまなみを望むテラスに温泉の足湯が付いています。客室はすべて四万川に面した南向きで、四季折々に表情を変える山並みを眺められます。部屋数が多くないぶん、貸切風呂も時間を選べば待たずに入りやすいのがうれしいところです。

下部温泉は武田信玄の隠し湯として知られ、橋本屋では源泉約32℃の天然冷鉱泉と50℃の温泉を交互に行き来する「交代浴」の文化が今も受け継がれています。この泉質の冷泉を楽しめる宿は全国でも数軒しかなく、日本名湯100選にも選ばれた希少な湯です。

金谷旅館の千人風呂は、日本最大の総ヒノキ造りの浴場として知られています。大正4年(1915年)建造の巨大な木造浴殿は全長約20メートルにおよび、ヒノキの香りに包まれながら湯に浸かれます。混浴ですが、女性専用時間と女性が利用できる連結した女湯も設けられています。旅館は1867年創業と歴史も深く、伊豆・金谷山のふもとの静かな谷に位置しています。大浴殿のほかに小さな露天風呂もあり、星空を眺めながらの入浴も楽しめます。

地蔵湯は城崎温泉に七つある外湯(そとゆ)のひとつで、地元の人たちが自宅の風呂のように利用しています。内湯はひとつだけで、深めでお湯はやや熱め、そのほかに小さな子供連れ用の浅くてぬるめの浴槽も別にあります。露天風呂やサウナはありません。お湯は城崎の外湯に共通する塩化物系の温泉です。2階には畳敷きの休憩スペースがあります。 名前の由来は、この湯の源から地蔵尊が現れたという言い伝えにあり、今も境内に祀られています。地元の方は入浴前にこの地蔵尊にお参りする習わしがあるそうです。江戸時代には多くの村人がここに通ったことから「里人の外湯」と呼ばれていました。毎年8月には地蔵盆が行われ、近所の子供たちがお菓子をもらう様子が見られます。

久米之癒は、道後温泉にほど近い松山市久米地区にある小さな日帰り温泉です。大浴場、ひのき風呂、露天風呂、水風呂、サウナがそろい、隣の神社にちなんで日・月・星と名付けられた岩盤浴が3室あります。お湯はとろりとなめらかで肌にやさしく、シャワーや水風呂にも同じ温泉水が使われているのが特徴です。寝転んで足だけを浸す足湯や、三玉石を通した温泉水を飲める給水スポットもあります。 安政の頃に大地震が起きた際、道後温泉のお湯が止まり、代わりにこの地の近くで湧き出したという言い伝えが残っていて、その後お百度参りでお湯は道後へ戻ったのだそうです。今も地元の人たちに長く愛されていて、夕方以降は常連さんで賑わいます。

福元屋の名物は、川沿いの岩をくり抜いた半露天の洞窟風呂。低い天井と薄暗い雰囲気の中、ラジウムを含む単純泉が床下から自然湧出しています。源泉温度は約36.6℃とぬるめで、冬は冷えることもありますが、それもこの9室だけの小さな宿ならではの個性です。

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出典

  1. 環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」(平成31年3月、日本温泉気候物理医学会監修)official
  2. 環境省 — 温泉法に関する通知・ガイドライン等についてofficial
  3. 日本温泉気候物理医学会 — 新禁忌・注意事項及び適応症
  4. 東京都浴場組合 — 42℃以上の「熱いお湯」に入浴するのはいいのか悪いのか?
  5. 栃尾又ラジウム温泉 自在館 — ラジウム温泉の泉質・適応症
  6. 静岡県温泉協会official